西宮市の光川和子さん(3good代表)が昨年秋から開始したインタビューサービス事業「声のアルバム」が注目を集めている。2月に西宮商工会議所が主催した「第一回みやスタビジネスプランコンテスト」の大賞を受賞したほか、西宮市、宝塚市(兵庫県)、太子町(大阪府)のふるさと納税返礼品にも採用されている。
■インタビュー後に残る幸福感
「幸福感が循環するインタビューのサービスを通して、健康寿命を延ばしたい」。事業に込めた思いを、光川さんはそう話す。ターゲットは高齢期の親子(親80歳代・子50歳代)を想定。子から依頼を受けた光川さんが親の住む実家を訪ね、2時間にわたり、子の幼少時代のエピソードや親が歩んできた半生をじっくりとインタビュー。30分に編集して、後日「声のアルバム」として依頼者の子に届ける。
「親からすれば、見知らぬ私がいきなり実家に訪れて(笑)話を聴くことになるのですが、話題がお子さんの昔の話となると、皆さんいきいきと振り返ってくださる。細かなところまで本当によく覚えていらっしゃるんです。インタビューの時間はあっという間で、初対面なのに昔から知っているような、不思議な感覚も生まれます」。親が歩んだヒストリーについても話題を広げ、声のアルバムを受け取った子からは「こんな話は初めて聴いた」と言われることも珍しくない。
「自分が生まれたころの話や両親の歩んだ人生について、中年にもなると親に改めて聴くということはないですよね。第三者の私だからこそ果たせる役割なのかもしれません。自分や家族のことだけについて2時間たっぷり話せるのは親御さんにとってもうれしいようで、『楽しかった』と声をそろえて振り返ってくださる。インタビュー後には『幸せな気持ち』が生まれていると感じます」
離れて住んでいるから話ができない。親が何を考えているかわからないが聴いてみたい、でも自分が聴くとけんかになるし、家族だからこその「気兼ね」もある……など。光川さんに声のアルバムを依頼する子の理由はさまざまだ。しかし幸福感は、依頼主であるすべての子にも訪れる。「こんな思いを込めて自分を育ててくれたのかという親への感謝が、改めてわき上がってくるようです。『次の休みには会いに行こうかな』と言ってくださる方もいました」。愛情たっぷりの声は、親がいなくなった後にも確かな支えとして残っていく。
■離れて暮らす子の葛藤も軽減したい
「親が老いた時、離れて暮らす子は何ができるのか、
「声のアルバム」だけあって、納品されるのは声だけで動画はない。ここに光川さんのこだわりがある。「田舎であれば鳥のさえずり、道路沿いの家であれば車の音など、生活音もまるごと残します。それが逆に、実家の風景や実家特有の『匂い』まで思い出すきっかけになるからです」。映像にはせず、声と音だけで聴く人のイメージを増幅させたいとの思いからだ。
現在、インタビューに対応できるエリアは近畿圏内に限定されているが、今後は体制を拡充し、全国各地にエリアを広げたいという。光川さん自身がそうだったように、離れて暮らす子が抱える葛藤を、親が元気なうちに軽減したいと願っている。
また、高齢期の親子に限らず、大事な人がいれば様々な利用シーンも考えられる。「例えばお世話になった恩師や退職する上司へのサプライズギフト、結婚式での親御さんから新郎新婦へなど。すべてのシーンに共通するのは『大事な人への思いは、相手を幸福にして、自分も幸福にする』ことです」。インタビューを通じて、癒やされることも多いという光川さん自身を含め、かかわるすべての人の間で幸福感が循環するような仕事をこれからも目指していく。
サービス概要などはHPで。https://3goodgift.com/
■3月30日 阪急阪神グループのイベントでワークショップ
3月からは、小学生親子向けの新たな取り組み「家族のきもちアルバム」を始める。子どもが産まれたときのこと、親世代が子どもだったころ、そして将来について親子で話し合い、写真を貼りながらワークシートを記入。世界に一つだけの「家族のきもちアルバム」を完成させる。ワークショップが、3月30日(木)10:00~11:30にオンライン形式(自宅からzoomで参加)で開催される。応募やイベント詳細はHPへ。https://stajimo.jp/?page_id=20185